「あの時マルチに捕まって良かった」





----------------------





街を歩いていると、それぞれの目的で多くの人間が声をかけている。

ナンパ、キャッチ、スカウト、宗教勧誘、目的はそれぞれ。



12月某日。

僕はその日、ナンパ講習長期生イノさんの実地講習だった。

イノさん(30代前半)は別のナンパ講習を2ヵ月受けるも童貞卒業できず、僕の講習を受けることに。

ヤギ講習開始からわずか2回目の実地中にスト初連れ出し→初即で無事童貞を卒業。

僕も自分のことのように嬉しかったのを覚えている。

その日は初即直後の講習ということもあり、

イノ「初即と童貞卒業できて解放感が凄いです。肩の荷が降りました!」

と晴れ晴れした良い表情をしていた。



ナンパはマインドが大きく左右するゲーム。

気持ちがノッている時は結果も上振れしやすい。

期待感高まる中、講習スタート。



互いのスマホを通話状態にし、僕はイノさんの2-3メートル後ろを追いかける。

イヤホンでイノさんの声かけを聞き、1声かけごとにフィードバック。

何声かけかしたところで、イノさんがビタ止め→その場で和みだす。

楽しそうな会話を聞きつつ柱の陰から眺めていると、

僕の1メートル離れた場所に立っていた女性が男女2人組に話しかけられた。

距離が近すぎて会話が丸聞こえ。

あーこれマルチ勧誘だ。

なぜ分かるかというと、過去に僕も全く同じ手口で声かけされた事があるからだ。

↓のニュース記事と全く同じ手口





僕の時は男女2人組から「良いラーメン屋知りませんか?」と声をかけられた。

30年東北の田舎町で生まれ育った心の綺麗な僕は、何の疑いもなく2,3おすすめ店を紹介した。

しかしその後唐突にLINE交換打診され、怪しくなり丁重にお断り。

3分後別の男に全く同じ内容で声かけしているのを見てようやく意図に気付いた。

男女2人組に声かけられると警戒心薄れるよね。

当時は上手いこと考えたなあと、むしろ感心した。





話が逸れたから本題に戻って。





マルチ男女のターゲットにされた女の子を見る。(以降タゲ子)

マスク越しだがパッと見は若くてかわいい。

興味が湧いて会話に耳を傾ける。



※以下ざっくり書き起こし

マルチ男「すみません、この街めったに来なくて。良い飲み屋知りません?」

タゲ子「私も詳しくないです」

マルチ女「そうなんですね!お姉さんオシャレだから良いお店知ってそうだなと思って」

タゲ子「すみません分からなくて」

マルチ男「全然大丈夫です。てかせっかくこうして知り合ったし、今度みんなで飲み行きません?ちなみに俺らはカップルじゃないですよ。何なら俺彼女いるんで!ほら!(スマホで2ショット見せる)だから友達として飲み行きましょ」

タゲ子「はぁ」

マルチ女「マルチ男とLINE交換するの不安だと思うので良かったら私と交換しません?私もお姉さんとお友達になりたいです」

タゲ子「じゃあLINEくらいなら」

※実際はLゲまでにもう少し和んでいる





(うわーLゲされとる・・・大丈夫かこの子)

そう思っているとイノさんがLゲ放流して戻ってくる。

一通りフィードバックした後に、隣の女の子がマルチ勧誘されていると伝える。

2人で少し眺めていると、マルチ男女はお近づきの印にとタゲ子にお菓子を2つ渡し、

「また連絡します」とその場を去っていた。



瞬間、



ヤギ「話聞こえてたんですけど、さっきの2人マルチ勧誘なんでLINEブロックした方がいいですよ」

タゲ子「え、そうなんですか?知りませんでした」



自然と声が出ていた。

自分でも驚いた。

この時ナンパしようなんて下心は間違いなくなかった。

あったとすれば、自分も騙されかけた手口のマルチに対する復讐心。



ヤギ「俺も全く同じ内容で声かけられたことあって。俺こう見えて親切だから店教えたのに、直後別の男にまた店聞いてるの見つけてキレそうになりましたよw」

タゲ子「そうなんですねw教えてくれてありがとうございます。お兄さんたちは何してたんですか?」



タゲ子の方から別の話題を振ってくる。いつものように切り返す。



ヤギ「仕事終わりに1杯飲みいくかって話してたとこ。お姉さんは?」

タゲ子「友達の家に行く予定だけど、まだ早いからカフェ行くか迷ってたら声かけられました」

ヤギ「そうなんだ。じゃあ時間まで付き合ってあげるよw」

タゲ子「えw」

ヤギ「まま、俺らとお茶しばこ!1杯奢るわ。その代わり勧誘は禁止な?」

タゲ子「私は勧誘しませんwどこ行くんですか?」

ヤギ「あんまり離れたとこ連れてかれると心配やろ?とりあえずそこ見えてるコンビニにしよ」

タゲ子「コンビニくらいだったら良いですよ」



謎の連れ出し。

これがステルスナンパってやつ?

3年半近くナンパしてきて、初めて下心ない声かけで連れ出しをした。

思い付きで僕のグループトークを披露するのもアリだなと思い、即席コンビ講習開始。

その後はイノさんもがっつりトークに混ぜて、30分ほど和む。

良い感じに盛り上がり、今度改めて3人でゆっくりご飯に行こうと約束し、Lゲ放流。

助けた御礼?ってことでマルチのお菓子を僕とイノさんに1つずつくれて、友達の家に向かっていった。



タゲ子は話してみるとノリも良かったため、

せっかくだからイノさんに準即を狙ってもらうことにした。

僕からもLINEで援護射撃。



IMG_1058





イノさんも無事にアポ組めた様子。


IMG_1059






イノさんとタゲ子のLINEやり取りを見ても、上手く口説ければ準即狙えそうな雰囲気はあった。

アポ当日、背中を押して送り出す。



IMG_1063





イノさんがアポの中、僕は別の方の講習へ。

2時間の講習を終えて23時過ぎ。

帰ろうと思い改札へ向かうと、なんと2人の姿が。

改札の前に立ち止まって向かい合い、傍から見ても楽しそうに談笑している。

タゲ子からイノさんへのボディタッチも見えた。

ヤギ「(やりましたねイノさん!)」

そう思い帰りの電車に乗り込んだ。

しかし、



IMG_1062





届いたのは負け報だった。

後で録音を聞き、状況を精査すると、負けた原因はイノさん本人ではなく戦略だと感じた。

イノさんには【何が負けに繋がったか】を詳細に伝え、【全然いけるので引き続き準準即を狙ってください】と指示。

しかしイノさんのLINEメンテは上手くいかず、年内は忙しいと次回アポをやんわり断られてしまう。

少し時間をおいて、再度アポ組みを狙いましょうということで一旦落ち着いた。






それから10日ほど経って。

僕はこの頃ちょうど年間スト100GETを達成し、年末を穏やかに過ごしていた。

クリスマスも彼女やキセクらとのんびりケーキを頬張る日々。

すると全く連絡を取っていなかったタゲ子からLINEが届く。



IMG_1064



イルミネーション写真が送られてきた。

さすがにこのタイミングでのLINEは分かりやすい。

明らかな”かまってアピール”。

雑にデート打診。

当たり前に通る。



IMG_1065



一応イノさんに確認を取る&依頼を預かり選手交代。

僕が準即を狙いに行くことに。



IMG_1066





逆ザオラルから3日後にアポ。

ごくごく普通の赤ちょうちん系居酒屋に連れて行く。



タゲ子「おばあちゃんの家みたいw」

と言われるくらい気取らない店で乾杯。



雪国出身だとか、実は夜職経験あるとか、その癖まったく酒が飲めないとか。

まずはお互いを知るための会話。

そこから徐々に男女の空気に入れ替えるためのトーク。

講習生に教えているいつも通りの流れで進行。

イノさんに対しアドバイスした通りの立ち回りで1軒目を出る。

全く同じ流れでコンビニを経由し、グダなくホテルへ。

極度の恥ずかしがり屋で時間はかかったが、無事準即を決めた。





ピロートークの中で、頼まれていたイノさんとのデートについて聞いたみた。

話を聞く限り、やっぱり可能性は全然あっただろうなと思った。

イノさんとのデートは楽しかったと言っていて、それは解散直前の改札でのやり取りを見ていた僕の目にもそう映ったから本音だと思う。

何なら僕とのアポ中も「今度は3人で鍋しよう」等の発言が出ていたし、それくらいイノさんへの印象は良かったはず。

結果の違いは"戦略的な立ち回りが出来ていたかどうか"の部分だけだった。

イノさんはその日準即するために必要な”ある事”が抜けていた。

この”ある事”はイノさん個人への指導内容なためここでは書かないが、本当にそれだけの差だった。

僕の指導力不足。反省。

逆に先に準即されていたら、僕に連絡してくることもなかっただろう。

女性とはそういうものだ。



ここまで読んでいただいた方の中には、「最初からヤギに食い付きあったからイノさんに行かせても無理」って思った方もいるかも知れない。

でも僕はそう思わない。

3人で知り合ったとしても、1:1のアポまで漕ぎ着けた時点で、その先は個々の能力勝負でしかない。

本気で僕に食い付いていたなら、そもそもイノさんとアポを組まないだろう。

タゲ子は2つの選択肢どちらも試して結果を下したに過ぎない。






ピロートークはその後も続き、出会いの話になった。



ヤギ「あの時こうなるとは思わなかったわ」※本音

タゲ子「ねw私ナンパとかスカウトはいっつも無視してるんだよ」

ヤギ「そうなん?(白目)」

タゲ子「でもあの2人組に話しかけられた時、思わず喋っちゃって。ちょっとやられたなーって思ってたんだよね。女の子もいると無視するのも気まずくて断れなくて」

ヤギ「結構楽しそうに喋ってたぞ?w」

タゲ子「ねーえw でもその後ヤギくん達が声かけてくれて。マルチの人たちより面白かったよ笑」

ヤギ「俺らをあんな素人と一緒にしないで^^」

タゲ子「いや何者?w でも今となっては””あの時マルチに捕まって良かった””って思ってるよ」

ヤギ「照れるやん」





ごめんね。本当はナンパ師で。





※タイトル詐欺すみませんでした笑

IMG_1067